露点と湿度:天気アプリがランナーに伝えていないこと
湿度 80% にはほとんど情報がない
走る前に天気アプリを開く。相対湿度 80%。きつそうに見えますよね。
そうかもしれないし、違うかもしれません。12 月の朝、気温 8°C で湿度 80% はさっぱりして気持ちいい。7 月の 32°C で湿度 80% は濡れタオル越しに息をしているような感覚です。同じ数字、まったく違う体験。
相対湿度の問題はそこです。相対なんです。今の空気が含む水分を、その温度で入りうる最大量と比べたもの。冷たい空気はもともと少ししか保持できないので、小さな数字の 80% は小さなまま。暖かい空気はずっと多くを保持できるので、大きな数字の 80% は大きな話になります。
アプリが見せるのは相対の数字。体が感じているのは絶対のほうです。
露点が実際に測っているもの
露点とは、空気が飽和して水が凝結し始める温度です。相対湿度と違って、日中に気温が上下しても揺れません。空気中の水分量が同じなら、外が 22°C でも 35°C でも露点は同じ。
ランナーにとって、これは湿度よりはるかに役に立つ指標です。
ざっくりの目安:
- 10°C 未満 — 乾いている。湿気は気にならない。
- 10〜15°C — 快適。汗がよく蒸発する。
- 15〜18°C — べたつき始める。ロングだと気づく。
- 18〜21°C — 不快。冷却系がきつくなり、ペースが落ちる。
- 21°C 超 — かなりきつい。熱中症リスクが上がる。短くするか、時間を早める。
参考までに、東南アジアの多くは年間を通して露点 23〜26°C。ヒューストンやマイアミの夏は 22〜24°C によく達する。ロンドンは 15°C を超えることがほとんどない。
なぜ体が気にするのは湿度ではなく露点なのか
走ると、体は汗の蒸発で熱を捨てます。蒸発の速度は、周りの空気がさらに水を吸えるかどうかで決まる。露点が高いと、空気はもう水をたくさん抱えていて、汗は皮膚に残るだけで蒸発しません。
体は冷やそうとして余計に働き、心拍数が上がります。血液が筋肉から皮膚へ回される。パフォーマンスは落ちます。
Ely ら (2007) は『Medicine & Science in Sports & Exercise』で 36 年分のマラソン結果を分析し、WBGT が 10°C を超えると完走タイムが段階的に遅くなること、その傾向は実力レベルにかかわらず(エリートを含めて)一貫していたことを示しました。
相対湿度ではこれが見えません。同じパーセンテージが温度によってまったく違う絶対水分量に対応するからです。
具体例
夏のある日、朝走るか夕方走るか迷っているとします。
朝 6 時:気温 22°C、相対湿度 83%、露点 19°C。 夕方 7 時:気温 30°C、相対湿度 53%、露点 19°C。
天気アプリは朝のほうを悪く見せます(83% 対 53%)。でも露点は同じ。水分の処理に関しては、体はどちらの場面でも同じくらい苦労します。夕方のほうがむしろきつい。同じ水分負荷に加えて 8°C ぶんの暑さが乗るからです。
別の日の朝とも比べてみます。
朝 A:気温 22°C、湿度 83%、露点 19°C。 朝 B:気温 22°C、湿度 55%、露点 12°C。
気温は同じ。湿度の数字は違って見えるけれど全部は語っていない。露点が補ってくれます。朝 B のほうが体感ははるかに楽。汗は蒸発し、心拍数は上がりすぎず、無理しなくても速く走れるはず。
GoWindow ではどう扱っているか
GoWindow のスコアリングでは、ランとハイクの「暑さと湿気」の主要指標として露点を使っています。相対湿度は露点データが取れないときのフォールバック、それと WBGT 推定の入力としてのみ登場します。
しきい値は、運動生理学が示す心拍ドリフトと主観的運動強度の関係から取っています。
スコアに湿度をあえて入れていないのは、露点で既に拾っている水分の影響を二重に数えてしまうからです。さらに、ランにとってはむしろ好都合な「涼しくて湿っぽい朝」を不当に下げてしまいます。
使い方
次に走る時間を決めるときは:
- 湿度ではなく露点を探す。多くの天気アプリは奥のほうに隠しているか、米国なら weather.gov で確認できます。
- 露点が 18°C を超えていたら、時間を早めるか距離を短くすることを検討する。
- 二つの時間帯を比べるなら、露点で比べる。気温や湿度の数字が似ていても、露点が低いほうが体感は楽です。
あるいは、GoWindow を開いて「ラン」をタップしてください。計算はこちらでやっています。
App Store に近日登場